学校長挨拶
学校長挨拶「アリアリナンヤッ!」でウェルビーイングな学校づくりを目指す
「アリアリナンヤッ!」でウェルビーイングな学校づくりを目指す
北海道帯広聾学校長 二階堂 洋子
令和7年度は幼稚部3名、小学部2名、中学部1名の新入生を迎え、全校幼児児童生徒15名で明るく温かい雰囲気の中スタートしています。0歳~2歳児までの乳幼児相談室(聴覚障害乳幼児療育事業)も開級しました。
今年度も「ウェルビーイング(よいあり方、幸せ)」な学校づくりにチャレンジしていきます。 武蔵野大学ウェルビーイング学部の前野隆司教授は研究結果から、「幸せは4つの因子を使うことでコントロールできる」と説いています。「幸せの4因子」でウェルビーイングの要素を高める心のあり方を示しています。
①「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)
やりがいや強みをもち、主体性の高い人は幸せということを表しています。
②「ありがとう」因子(つながりと感謝の因子)
人に感謝し、利他的な人は幸せになると言われています。
③「なんとかなる」因子(前向きと楽観の因子)
何事もなんとかなると思える、ポジティブな人は幸せだそうです。
④「ありのままに」因子(独立と自分らしさの因子)
自分と他者を比べすぎず、しっかりとした自分らしさをもっている人は幸せだということです。
前野先生が監修して子ども向けに作った読み物の中では、この「ありがとう、ありのまま に、なんとかなる、やってみようの4つの心」を頭の2文字を並べて「アリアリナンヤッ!」の呪文で唱えています。「子どもたちが幸せな未来を歩んでいけるようになる」、「幸せに生きるための力をもった子どもたちに 育つ」ためには、まず大人が幸せな生き方を体現していく、子どもたちに見せていくことが大切なのだと思います。
令和7年度も全教職員が一丸となって、帯広聾学校の学校教育目標「自ら学び、よく考え、行動できる子ども」「自分の思いを豊かに表現できる子ども」「思いやりがあり、明るく元気な子ども」が達成できるように全力で取り組んでまいります。
保護者の皆様や地域の皆様、盲聾教育後援会、同窓会、本校に関わる全ての皆様、今年度も変わらぬ御理解と御支援をいただきますよう、一緒に「アリアリナンヤッ!」の心でよろしくお願いいたします。
「本気で頑張る」、「本物を見る、感じる」体験
北海道帯広聾学校長 二階堂 洋子
年度当初の挨拶、自己紹介は今年度の学校だより第1号をご覧いただければと思います。
先日、1学期の終業式を迎えることができました。校歌をそれぞれの表現で元気に歌う様子や、幼児児童生徒代表の子どもが、1学期に頑張ったことやこれから挑戦したいことなどを堂々と発表する姿に、頼もしさと成長を感じました。特に1学期に頑張った、思い出の行事として、運動会への取り組みのことが話されていましたが、6月15日に行われた本校の運動会は、暑すぎず寒すぎず、絶好のグラウンドコンディションの中で元気いっぱいの子ども達の姿が見られました。今年の運動会のテーマは、「みんなで目指せ、№1!」。それぞれの№1を目指して取り組みました。
運動会の種目には勝ち負けがつくものがあります。勝つ喜び、負けた悔しさ、勝つことも負けることもあるということを知ることは大切なことです。
少し前になりますが、「全員頑張っているのだから全員が1番だ」として、文字通り全員に1番を与えたということがあったり、手を繋いで並んでゴールするという学校があったりしました。考え方はいろいろあると思いますし、確かに全員の頑張りを評価したいですが、1位は1位であり、最下位は最下位です。勝ったもの、1位にしかない報いがあるように、負けたもの、1位になれなかったものにしかない学びがあります。「本気で頑張る」ことを経験したり「チームで力を合わせて取り組む」充実感を体験したり、勝ったり負けたりしながら「自分自身と向き合う」。その先に結果に関係なく楽しかったと思える運動会になる。大切なものは、勝ち負けの向こう側にある、ということを子ども達や先生方の様子を見て改めて思った運動会となりました。教育に携わる私達はこのことをよく知っている、理解できると思います。ただ、保護者の方の中には、「(我が子の動きが)遅くてチームが負けてしまう、迷惑をかけてしまうのが申し訳ない」、「うちの子のせいで負けたらどうしようと思っていた」等の話をされていた方もいました。そういうことではないということ、運動会だけではありませんが、学校行事のねらい、意味や価値などについては、保護者にも分かりやすく伝えたり、フォローしたりしていくことも必要と感じました。
もちろん、子どもたちの頑張りや成長をたくさん感じられた、笑いあり、涙ありの運動会になったことは言うまでもありません。たくさんの励まし、ご声援をありがとうございました。
そして夏休みに入った7月30日には、本校PTA企画の「デフバスケットボール(※1)女子チームと子ども達との交流会」が本校体育館で行われました。新得町での合宿を終えて、新千歳空港へ向かう途中で本校に立ち寄っていただきました。選手、スタッフの皆さんには練習後にも関わらず、明るく楽しみながら子ども達との交流を盛り上げていただきました。さらにミニゲームで選手の本物のプレーを間近で見ることができ、子ども達は好プレーやゴールが決まる度に、歓声をあげながら見入っていました。
子ども達からは、「とても楽しかった」、「一人一人のプレーも上手だったが、連携が素晴らしいと思った」、「聴者は声かけでパスなど出せるが、デフバスケは、目やサインを使っていて、コミュニケーションがすごい」などの感想がありました。明確な目標をもってチームでチャレンジしている、しかも楽しみながら生き生きと取り組んでいる姿を見て、希望や憧れを感じた子ども達も多かったのではないでしょうか。“本物”を身近に感じ、体験できる貴重な機会、そして、2025年に日本で初開催されるデフリンピックでも応援したいチームとの出会いとなりました。選手、スタッフの皆様初め、新得町、地域の皆様のご協力に感謝します。本校PTA、保護者の皆様、ナイス企画でした。引き続き豊かな夏休みが送られますように、よろしくお願いいたします。
(※1)デフバスケットボール:聴覚障害者によるバスケットボールをデフバスケットボールと言います。デフバスケットボールの主な特徴としては、競技中の仲間が走り回る足音、ドリブルでボールが跳ねる音、味方や監督の声、観客の応援の音などが聴こえにくい、もしくは全く聴こえない状態でバスケットボールをプレーします。デフバスケットボールには特別なルールはありません。特別な措置として、試合中にコートの対角にフラッグマンを設置します。審判やテーブルオフィシャルのブザーの音が鳴るのと同時に目立った色の旗を振ってもらうことによって視覚的に状況を判断できるように情報保障を行なっています。―デフバスケットボール日本代表公式サイトよりー
令和6年7月