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当ホームページについて

このウェブページは、北海道帯広聾学校が教育利用を目的として運営している公式ホームページです。本ページ掲載の内容、写真等の無断転載、営業誌掲載をお断りします。
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お知らせ

校長挨拶(3月)

「学校」を成長させる

北海道帯広聾学校長 大塚 雅彦

 

 令和5年度もまもなく終わります。卒業式の練習が始まり、幼稚部の年長さんは小学1年生になる喜びにうきうきしている様子が見られます。本校を巣立っていく中学部3年生は、不安と期待と地元を離れる寂しさがない交ぜになりながら、思い出づくりにいそしんでいるようです。

 「ソーシャル・ディスタンス」という言葉も最近はあまり耳にしなくなりましたが、身体的な距離感や、表情が読み取りにくいマスクを着用する生活は、致し方ないことではありますが、心の距離をもつくってしまったように思います。

 新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから、本校は運動会等の行事などの打ち上げや懇親会を再開しましたが、酒席に限らず、心を開いて語らう懇親の場というのは、本当に大切なものだったんだな、ということを実感しました。久しぶりに、転出する先生や職員のための送別会も開催できそうです。

 

 今年度はいろいろな取組をしました。その中で、少し手応えを感じたものを紹介します。

 4月の人事異動で、他の障がい種の特別支援学校から本校に赴任される先生もいます。異動して、数日後には子どもたちを迎え、1学期の教科学習がすぐに始まります。小・中学校と同じ教科書を使って授業するためにがっつりと教材研究をして、初めて出会う聴覚障がいのある子どもたちと向き合い、幼稚部においては最初は子どもたちとうまく関われない、あるいは振り回されながら、冷や汗をかきながら毎日を過ごしていることだろう(悩まないわけがない)、とずっと気になっていました。

 そこで、夏休みに、初任段階(1~5年目)の先生と、聾学校の経験の短いベテランの先生のための学習会を開催することにしました。

 年度途中の思いつきだったため、研究部の負担にならないように、「校長主催」ということで取り組んだのですが、対象の先生がほとんど参加してくれて、小集団の中で、現在抱えている悩み、手話がなかなか覚えられない焦り、授業力に自信がもてない困惑、今さら聞くに聞けない専門用語の難解など、たくさんの発言がありました。それぞれの思いを共有し、学部を超えた先生同士のつながり、同僚性を少しでも高めることができたのではないかと感じました。

 以前受けた研修で、講師の知的障がい特別支援学校の先生から聞いた話ですが、その方の所属する特別支援学校に難聴のある知的障がいの児童がいて、聾学校から異動した先生が、聾学校ではスタンダードな方法で指導に当たったのですが、それは、他の先生方にとっては見たこともない指導方法で「目からうろこが落ちた思いだった」とのことでした。

 聾学校の「当たり前」が、他の障がい種にとっての新たな知見になり得るのならば、本校に異動してきた他障がいの専門性をもつ先生からも学ぶべきところがあるのではないか。聴覚障がい教育の専門性とハイブリッドで取り組むことで、大きな成果が得られるのではないか。そんな考え方もできるのではないかと思いました。

 「聴覚障がい教育の専門性は、聾学校間の教員の異動により維持・向上・強化するのが効率がよく効果的」と考えていたところでしたが、教職員の生き方が多様になってきた昨今、「聾学校からの転入者が少ない」という地方の聾学校の現状があります。しかし、今はそれを憂いているより、「他の障がい種の特別支援学校から転入した先生を、いかに味方にしていくか」「彼らの聴覚障がいの専門性と教科指導力を、いかに効率的に向上させていくか」という考え方にシフトしていく時期が来ているのかもしれない。そのように思うようになってきました。

 一方、この冬休みには、聾学校経験の「長い」先生(歴は問わず、学部主事・主任、分掌部長、行事等でリーダー的立場で動くことの多い先生等)を対象に、同様の学習会を行ってみました。そこでは、後輩にきちんと伝わるアドバイスの在り方、責任をもって遂行してもらえるような仕事の振り方、自分自身の仕事への向き合い方など、人材育成も踏まえた悩み事も出てきて、聾学校のベテラン教師ならではの困り感を共有することができました。

 得てして、教職経験の浅い、聾学校経験の短い先生への支援の必要性に目が行きがちですが、ミドルリーダーの本音にもじっくり耳を傾ける必要があることを痛感しました。主催した私にとっても大きな学びのある取組となりました。

 聾学校に勤める私たちは、聴覚障がい教育及び特別支援教育のプロフェッショナルという意識をもって、学校教育に取り組む必要があると思います。また、様々な取り組みを通して「学校」を成長させていくことが校長としての大命題だと踏まえ、今後も取り組んでいきたいと思います。

 さて、来年度は、全国聾学校教頭会総会・研究協議会が北海道で開催される予定です。

 参加される皆様に、北海道の聴覚障がい教育の「今」を感じていただけるような機会になればと思います。よろしくお願いします。

(令和6年3月)

帯広聾学校
2~3月。大雪が降っては解けて、の繰り返しです。


 

お知らせ

校長挨拶(12月)
「存在」する学校にするために
                                                            北海道帯広聾学校長 大塚 雅彦

 北海道内には179の市町村があります。政令指定都市の札幌市のことを知らない人はいないと思いますが、「179市町村のすべての地名を知っている」という人はどのくらいいるでしょうか。
 北海道はアイヌ語に由来する、北海道外の方々にとってはあまりなじみのない読み方をする地名がたくさんあります。中には「難読地名」と呼ばれる、北海道民でも読めない場所もあったりします。
 その市町村や周辺地区に住んでいる人は当たり前に知っているけれど、縁もゆかりもない人にとっては、「そんな地名あったっけ?」、「それって北海道にあるの?」ということも少なくないと思います。

 さて、10月末に、北海道内の特別支援学校PTAの全道大会が、本校をメイン会場に行われました。隣接する帯広盲学校とともに主管校となり、オンラインで開催しました。
 その折に、十勝の南西部にある中札内村の森田匡彦村長を講師に、記念講演を行いました。
 かねてより森田村長は、村内にある中札内高等養護学校を本当によく御存知で、学校と村役場等とのコラボによる取り組みが大きな教育的成果を生んでいます。
 中札内村は、SNSによる情報発信での広報・啓発とともに、どの自治体でも行っていることながら、それをとにかく徹底的に力を入れて実施し、その取り組みの成果は数値にも現れ、ふるさと納税額が以前の約65倍にまで跳ね上がったそうです。
 そして、冒頭に記述した地名に関することにも触れられていました。
「知られていないのは、存在していないのと同じことです」
「本日、このようにお話しする機会をいただいて、これまで中札内村を知らなかった方々の中に、今、中札内村が存在しました」
とお話しされていたのが、とても印象的でした。
 今年、創立86周年になる本校ではありますが、市内において、決して認知度が高いわけではありません。本校を人々の中に存在するものとするための方法はいろいろあるのだ、と背中を押された気がしました。
 考えてみれは、ホームページというものは、基本的にそのページに用がある方しか訪れないものです。ですから、本校でホームページの更新に力を入れ、それなりに成果を挙げていると思っていましたが、定期的に見てくださる方でなければ更新されていることを知るすべはありません。もっと広がりをもたせる方法が、まだまだあるはずです。
 確かにその通り。その通りなのですが。
 やはりセキュリティ面、炎上案件の未然防止など、不安は尽きません。しかし、それは学校ホームページの運用と、さほど変わらないような気もします。
 情報発信の方法であるSNSは数多く存在し、どのように選んで、どのように運用すれば、業務過多にならずに効果的に本校のことを知っていただくことができるのか。
 北海道内でも、既にSNSを活用して情報発信している特別支援学校が数校あります。そういった先行事例を参考にしながら、次年度に向けてしっかり考えていきたいと思います。
 多くの人々の中に、帯広聾学校が「存在」するように、教職員と一緒に知恵を絞りながら取り組んでいきたいと考えています。
                                                                          (令和5年12月)
             ※中札内村長に、掲載許可をいただいています。
冬の帯広聾学校
12月の帯広聾学校
 

お知らせ

校長挨拶(10月)
授業研究について思うこと
                                                            北海道帯広聾学校長 大塚 雅彦

 年度の半ばを過ぎたくらいのこの時期、帯広聾学校は、ちょっとした授業研究ラッシュになっています。私も、「今日はあの教室の授業を見に行って、あさっては先日の授業の反省会があって……」と、若干右往左往しています。

 本校では、全ての教員が年に一度、授業研究を行います。各研究グループで学習指導案を検討し、部内授業研究会は各学部で、全校授業研究会は全教員で参観し、その後、授業反省会を行います。

 近年、参観した先生方からの質問や意見、感想がなかなか出てきづらい傾向があるので、研究部もいろいろと工夫を凝らし、試行錯誤しながら反省会の運営をしてくれています。

 授業を提供してくれた先生に敬意を表しつつ、より魅力的な授業になるように、より子どもたちの心身の成長や学力の向上等を促すための研究につながるように、「自分は違う学部だから、感想や意見なんて言うのは場違いかも…」などと思わないで、たくさんの先生方からの発言に期待したいところです。そうでないと、グループで協力し合って授業準備に費やした時間と労力、当日緊張しながらも精一杯取り組んだ授業者に対して失礼だと思います。これほど努力してつくり上げたものが、「感想のひとつも語るに価しない失敗授業」などということは、絶対にあり得ません。

 本校の反省会も変容が見られ、活性化し始めてきているので、安心するとともに、「このまま継続してほしい」と願っています。

 コロナ前は、部内授業研究を行う教室に、同じ学部の先生全員が、全校授業研究では、全学部の先生が教室に入って参観していました。

 そういえば、私も若い頃、全校授業研究の授業者に当たり、前日に会場設営をしたあと、自分しかいない夕方の教室に、ずらりと並んだパイプ椅子を見て、「ローマのコロシアムの真ん中にいるみたいだ」と身ぶるいしたことがありました。

当日は2時間目に授業を行い、その日の放課後に授業反省会が行われました。冷や汗をかきながら授業を行い、その後、グループで時間を見つけて集まり、私の授業の感想、意見、指摘などをいただき、それらも整理しながら全校の授業反省会に臨みました。そこでもたくさんの意見、感想、指摘・評価をいただき、最後は脱力しつつも「明日も頑張ろう」と思う気概をいただきました。その夜、慰労会を開いていただき、とても嬉しかった思い出もあります。指導案検討から反省会までグループが味方でいてくれるという心強さに、より結束も強くなった気がしました。

 コロナ禍でソーシャル・ディスタンスが強く叫ばれた時期は、教室にたくさんの先生が入ることがはばかられたので、いくつかの会場に分かれてオンラインで参観したり、オンデマンドで視聴したり、いろいろ試していましたが、ウィズ・コロナとなった今年度は、授業を複数の場所から定点録画するなどし、期間をしばらく設けて授業ビデオを視聴し、時間をかけてそれぞれの感想や意見を整理して、別日に設定した授業反省会に臨んでもらうことになりました。

 リアルタイムの臨場感や、授業者と子どもがつくり出す空気感は、その時その場で体験した方がよいのだろうと思いますが、多くの先生方は、その後も自身の授業が詰まっています。放課後、参観した内容を思い出しながらも考えがまとまらず、メモを手がかりに、「さあ皆さん、意見を出してください」と言われても、なかなか難しい話かもしれません。授業者にも、自分の授業を振り返る時間が必要ですし、全体の反省会の前に、グループ内で反省する時間的な余裕もできます。

 未だ継続が必要な基本的な感染対策とともにコロナ禍で得られた知見の発展として、また、効率のよい働き方の観点も踏まえ、今年度については、このようなオンデマンドの形で行っていますが、よりよいアイデアが見つかったとき、真似したくなるような他校の実践に出会ったとき、建設的な議論をして変えていけたらいいなと思います。

 校長としては、授業者に、さらによい授業をつくっていってもらうために、専門的になりすぎず、できるだけ分かりやすい普段着の言葉で、「次に取り入れてみようかな」と思えるようなアイデアを盛り込みながら助言するよう肝に命じ、これからも授業研究及び授業反省会に臨んでいきます。

                                                      (令和5年10月)
10月の帯広聾学校
10月の帯広聾学校
 

お知らせ


校長挨拶(8月)
Society 5.0時代を生きるアナログ世代の教員は
北海道帯広聾学校長 大塚 雅彦

 最近、マスコミ等でよく目にするのですが、ドラマや映画等の動画を倍速再生して視聴する人が増えているようです。本校の子どもたちの中にもいるようで、教育関係者としては、「内容理解ができているのだろうか」、「リテラシー(読み書き能力)に影響は出ないのだろうか」に始まり、「読書したり、教科書の本文を読むに当たっても、耐性が弱まってしまうではないだろうか」、「導入と結果だけを重視して、途中経過を大事にする意識が欠落するのではないか」等、様々な心配事があふれ出てきます。
 懸念したとおりの状況になって指導が必要な子どももいますが、意外と「それはそれ、これはこれ」ときっちり区別して対処できる子どもたちもいるな、という印象をもっています。デジタル・ネイティブの子どもたちには、切り替え能力が高いところもあるのかもしれません。
 ところで、ICT機器を授業や校務に活用するようになって数年が経ちます。学部によってその進め方、取り組み方はそれぞれで、幼児児童生徒の発達の段階を踏まえると、それは当然のことだと思います。
 とりわけ、通常の教科学習を行っている小・中学部においては、一般の小・中学校での活用状況が掲載された指導資料等を参考に取り組むことが望まれますが、集団の中での活用と、主に小人数あるいはマン・ツー・マンでの学習形態となる本校での活用においては、求めるものが若干違うように感じられるところもあり、相当の読みかえも必要になります。それでも教育的効果を上げるために頑張って取り組んでいるところです。
 さて、小・中学部においては、児童生徒への一人一台端末が整備され、子どもたちは思う以上のスピードで使いこなし、自分のものにしていきます。一方で、ICT機器の活用に関わる子どもたちの「本当」の実態も把握する必要があると思っています。
 文部科学省によるGIGAスクール構想が打ち出される前から、子どもたちはコンピュータを活用した学習を行っていました。さらに、子どもたちの中には、家庭においてインターネットに親しみ、スマートフォンやタブレット端末等を駆使して、興味のあるサイトにアクセスしたり、動画配信サイトで知識を得たりと、学校教育とは別のところで雑学を増やし、視野を広げている者もいます。一方で、漫然と流れる動画を見ながら時間をつぶしたり、一家団らんや食事の際にもタブレット等の画面から目が離せない状況になっていたりと、あまり望ましいとは思えない活用の仕方をしている者もいたりして、我々の把握できないところで、子どもたちは良くも悪くもICT活用能力を高めていることも感じられます。むしろ、学校において、「インターネットの使用を一時的に絶ってデジタル依存から脱するための『デジタル・デトックス』が必要かも……」と思われる事例もあって、いろいろな視点からの実態把握が求められることを感じます。
  家庭でのICTの使い方を頭ごなしに否定するのではなく、学校におけるICT活用の効果が家庭でのそれを上回り、「こんなにいいことがたくさんある!」、「すごく分かりやすい」、「これだったら自分にもできる」というプラス経験を積み重ね、学校での活用の仕方が家庭にも反映するようになってくれるのが理想だな、と思います。。
 ところで、本校には、デジタル世代に生まれ育った教員もいますし、ICTの知識が豊富な中堅・ベテランの教員もいますが、私も含め、40代後半から50代の、教職経験の長いベテラン教員ほど、ICT活用に対して敷居の高さを感じる者が多いのではないかと感じています。
 まずは使ってみる。
 アナログ世代の我々も頑張って意識変革し、子どもたちと同じ土俵に立って、得意ではないなりにもデジタルの長所と短所を伝えたり、時には子どもたちにやり込められたり、負けずにやり返したり、そんなやりとりも、Society5.0時代を生きる子どもたちを理解するために必要なプロセスなのかもしれない、と思っています。
令和5年8月

        
          7月下旬の帯広は、連日35℃越えの猛暑でした。
 

お知らせ

校長挨拶(6月)
関係機関訪問に同行して
                                                                            北海道帯広聾学校長  大 塚  雅 彦

 北海道内の7校の聾学校のうち、幼稚部・小学部・中学部を設置する6校の、いわゆる「義務校」には、「聴覚障がい乳幼児相談室」が置かれています。
 昭和63年に北海道民生部(現・北海道保健福祉部)が開始した「聴覚障がい乳幼児療育事業」に、北海道教育委員会が協力する形で実施されることとなり、公教育において療育が行える仕組みが作られました。
 帯広聾学校の乳幼児相談室では、新生児聴覚検査でリファー(より詳しい検査が必要)になった子どものうち、精密検査で「難聴、あるいはその疑いがある」と診断された子どもに対して療育を行っています。0歳から2歳までの聴覚障がい乳幼児とその保護者が療育に通い、年齢別のグループ活動のほか、月1回の個別指導を行う等しています。(詳しくは当ホームページの「乳幼児教育相談」を御覧ください。)
 
 さて、本校では、聴覚障がい乳幼児の早期発見・早期療育を促進するため、十勝管内の医療機関、保健所、保健センター、言葉の教室、発達支援センター等を訪問しています。
 例年は、乳幼児相談担当者だけで各所に伺っていますが、今年度は校長も同行させてもらい、市町村教育委員会も加えて訪問することとしました。
 道内の各聾学校の抱える校区は非常に広く、本校においては、下の図のとおり、十勝管内全域とオホーツク管内の北見市・置戸町・訓子府町、上川管内の富良野市・南富良野市・占冠村に及びます。 これらすべての市町村を訪問するには、人員も足りず大変な労力である上に、時間的にも予算的にも無理が伴います。ですので、まずは学校の所在する十勝管内を回ろうと実施しているところです。今はオンラインの時代なので、その他の校区内の地域についても何らかの接点をもてればと思いますが、これは今後の課題です。
 今年度は、広尾町、大樹町、更別町、中札内村、上士幌町、士幌町、鹿追町、清水町、音更町、芽室町そして帯広市と、3日に分けて訪問しました。
 保健福祉課、学校教育課、保健師の皆様を始め、児童発達支援センター、児童相談所等、多くの関係機関の皆様に、本校の教育及び療育について御理解いただくとともに、地域の状況について丁寧に御説明いただき、大変感謝しております。
 顔を合わせてお話することの大切さに、改めて気付かされました。
 より気持ちを込めて伝えるように心がけ、聞いてくださる皆様の反応を受け止めながら、取り組むことができました。
 「本校は、十勝管内で唯一のきこえの困難さについての専門性をもっている特別支援学校であること」、「十勝のきこえとことばの相談を行っていること」、「学年対応の教科学習を行っている特別支援学校であり、授業への配慮事項等にも対応できること」、「聴覚障がい教育の指導上の配慮や教室環境等が、発達障がいの指導・支援にも役立つ可能性があること」など、お伝えさせていただきました。
 本校は今年で創立86周年となりますが、地域によっては、その存在自体をあまり認知されていないところもありました。歴史があるからといって、泰然と「待ち」の姿勢でいるのでは、いつまでも現状は変わらず、積極的に動き、地域社会に知ってもらい、頼りにされる学校として存在するために、今後も努力していかなければならないことを痛感しました。
 それとともに、十勝管内において、きこえやことばの困難性がまだ顕在化していないけれども、潜在的なニーズは少なからずあるのではないかと感じました。そして、それが分かったときに、速やかに対応し、センター的機能を発揮できる学校であることの必要性を強く感じました。

帯広聾学校の校区(黄色は帯広市)
 

お知らせ

校長挨拶(4月)
御 挨 拶
                                                      北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 北海道帯広聾学校のホームページを御覧いただき、ありがとうございます。
 本校は、北海道中東部に位置する十勝管内・帯広市にある聴覚障がい教育を行う特別支援学校です。
 昭和12年に開校し、今年で86年目を迎えた歴史ある学校で、地域の方々、盲聾教育後援会、同窓会の方々に支えられ、聴覚に障がいのある子どもたちの教育と保護者支援を行っています。
 令和5年度は、幼稚部5名、小学部6名、中学部3名、合計14名の子どもたちが在籍しています。
また、乳幼児相談室を設置し、0歳から2歳までの聴覚障がいのある乳幼児と保護者、御家族への支援を行っています。
 家族的な雰囲気の中、少人数のメリットを生かし、確かな学力と言語力の向上を図り、自立と社会参加を目指して教育活動を進めています。
 今年度は、学校教育目標を見直しました。昨年度1年間、本校の教育活動に関わり、学校教育を取り巻く新しい動きなども含め、目指す学校像、目指す教員像をはじめ、「こんな子どもを育てたい」という子ども像をイメージし、学校教育目標として設定しました。

○ 自ら学び、よく考え、行動できる子ども (知識・技能)
○ 自分の思いを豊かに表現できる子ども  (思考力・判断力・表現力)
○ 思いやりがあり、明るく元気な子ども  (学びに向かう力・人間性等)
 
 
 また、「本年度の重点」として、以下のように設定しました。

・適切な実態把握と聴覚障がいの特性を踏まえた教科指導力・生徒指導力の向上
・ICT活用等による授業改善及び授業実践
・安全で安心な学校の環境づくりと指導の充実
・地域や関係機関との連携強化及びろう・難聴者との関わり
・効率的な働き方の推進と質の高い教育活動の実現
 
 
 これらの実現のために、それぞれの学部において子どもたちの発達の段階に合わせ、幼稚園、小学校・中学校に準ずる教育活動を行うほか、併せもつ障がいのある子どもの実態にも配慮し、個に応じた指導に取り組んでいきたいと思います。
 特に、子どもたちの育ちや学びの連続性を踏まえた指導・支援、教育活動に力を入れていきたいと考えています。
 なお、子どもたちを育んでいくためには、保護者の皆様、地域の皆様、本校に関わる全ての方々と教職員が一丸となって、教育活動を進めていく必要があります。
 今後とも本校および本校の子どもたちへの、一層の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
 本ホームページでは、教育内容や教育活動を随時更新してまいりますので、御意見や御感想がありましたら、電子メールやFAX等にてお寄せいただければ幸いに存じます。
 なお、この校長のページにつきましても、今後更新していきたいと考えております。
 今年1年間、どうぞよろしくお願いいたします。
                                                                                         
                           令和5年4月

道東では、入学式にはまだ桜は咲きません。
 

お知らせ

 校長挨拶(2月)
                                                将来の選択肢
                                                                         北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 十勝地域は、日高山脈や大雪山系の山々に湿った空気が遮られ、比較的雪が少ないところとして知
られています。ただここ数年、帯広もなかなかの積雪に見舞われることもあり、穏やかではない気候
の変動を感じます。道東は冬期間の気温がひときわ低く、朝晩は氷点下二桁になることはいわば日常
で、降った雪が凍てついてなかなか解けにくいのが、こちらの冬景色のように感じられます。   
そんな中、白い息を吐きながら、帯広聾学校の子どもたちは毎日元気よく学校に通ってきています。

  さて、去る2月17日、本校にて、中学部生徒を対象に「ドクター体験」を行われました。
 帯広市内にある北斗病院の井上信幸先生(心臓血管外科医)が来校され、心臓の仕組みなどのレク
チャーをしてくださり、さまざまな医療体験をさせてくださいました。
 生徒たちは、実際に術衣を着て、電気メスを使って鶏肉を切ったり、手術用の器具や糸と針を使っ
て縫合したり、豚の心臓を使って手術体験をしたりなど、大変貴重で有意義な時間を過ごさせていた
だきました。
 もともとこの体験学習は、私が教頭として本校に勤めていた3年前に実施する予定でした。
 本校の教員と井上先生が手話サークルで知り合ったのがきっかけで、「聞こえない子どもたちに、
ぜひ医療関係の仕事を知ってほしい」という井上先生の熱意により、実施に向けて準備を進めていた
ところでした。
 ところが、当日を翌週に控えたある日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための策として、北
海道全域での一斉休校が決定されました。
 そのことから、「ドクター体験」は中止を余儀なくされました。子どもたちの安全・安心のために
致し方ないことではありましたが、非常に残念な思いでいたことを覚えています。

 それがこのほど、3年越しに満を持しての開催と相成りました。
 私も、本校に戻ってきたタイミングでこの体験学習に立ち会えて、奇跡のような幸運を感じました。

 かつて日本には、障がいがあるという理由で免許や資格の取得を制限または禁止を定める「障害者
に係る欠格条項」という法令がありました。しかし、社会の変化や各障がいの当事者団体による運動
などによって見直しが始まり、欠格条項を定めた63制度のうちの約半分が改正され、2001年の
通常国会で可決・成立したという歴史があります。
 井上先生は、「医師法も改正され、聴覚障がい者も医師免許を取得することが可能になったが、全
国でまだ10名程度、看護師等の医療従事者全部を合わせても100名ほどしかいない現状。ぜひ聴
覚障がいの子どもたちに、医療の世界に飛び込んできてほしい」とおっしゃっていました。
 生徒たちも目を輝かせながら、経験したことのない取組にチャレンジしていました。
 とりわけ、まもなく本校を旅立つ中学部3学年の生徒にとっては、かなり心に響く体験だったので
はないかと思います。
 当日は報道の方も来校しており、インタビューを求められた生徒が、「長時間かけて手術をするお
医者さんがかっこいいと思った」、「ろう者でもできるんだと思って、選択肢の1つになった」と答
えていたのが印象的でした。

 井上先生は次年度、東京へ御栄転されるということで、継続的な実施は難しいと思いますが、機会
があれば、ぜひまた取り組みたいと考えています。

                                                                                            令和5年2月




    
 

お知らせ

校長挨拶(12月)
                                       もうひとつの聾学校
                                                                  北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 現在、北海道には7つの聾学校があります。
 札幌、室蘭、函館、旭川、帯広の5つの聾学校と、高等部単置の北海道高等聾学校、それから
聴覚障がいと知的障がいの2部門が設置された釧路鶴野支援学校(2014年3月に閉校した釧路聾
学校より当校の聴覚障がい教育部門へ移転)です。
 なお、1974年に閉校した稚内聾学校、2014年に閉校した小樽聾学校を合わせると、もともと
北海道には9つの聾学校があったことになります。
 さて、今年度、帯広聾学校に赴任し、創設者である初代校長の足跡をたどろうと過去の記念誌
や文献に目を通していたときに、実は北海道にはもう1校、聾学校があったことが分かりました。
 それは、1945年から5年間だけ存在した「御影(みかげ)聾学校」です。
 本校の沿革誌には次のように書かれていました。(個人名等に関する記載は略すなどの改編を
っています。)

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昭和20年7月6日
 札幌にも空襲必至となり強制疎開の命を受け、特に事情の悪い者を十勝御影農志塾アフタケ
ヤーに疎開し、収容施設を設ける。尚、疎開児童教育の為に札幌聾話学校を移転し、普通学級
と特別学級を設ける。

(中略)

昭和23年10月1日 
 北海道立に移管し名称は北海道立御影聾学校となる。
昭和25年4月1日
 北海道御影聾学校と改称する。 

(中略)

昭和25年10月1日
 北海道御影聾学校廃校となる。全校児童生徒は北海道帯広聾学校に吸収される。12名の職員
は北海道帯広聾学校勤務となる。

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 所在地は十勝管内の清水町で、帯広市の近郊にありながらも本校とはほとんど接点がなかった
ようで、どこにあったのか、今はどうなっているのかなど正確に分かる資料には出会うことがで
きませんでした。
 曖昧なところもありますが、知り得た情報を整理すると次のようになります。
 当時、「聴覚障がい者が安住できる地とすること」を目的として、十勝御影村(現在の清水町)
に創設された「北海道聾唖農志塾」に、1945年7月、空襲を逃れて札幌聾学校の児童生徒や教職
員等関係者が疎開してきました。その後、教職員14名、児童生徒26名で教育活動を始めたようで
す。それが「御影聾学校」になりました。
 しかし、疎開してわずか1か月後に、終戦を迎えることとなりました。
 御影聾学校は道立に移管されたにもかかわらず、旭川や小樽等の聾学校に転校する児童生徒が
続出したため、学校存続が難しくなり、1950年10月、ついに廃校となりました。残っていた児童
生徒や教職員は帯広聾学校が受け入れることとなりました。
 その後、御影聾学校は十勝御影村に消滅し、その姿を再び見せることはありませんでした。
 私のあたった資料には、1952年、御影村に聾唖児施設御影学園が存在していたことが記されて
いたので、「これは御影聾学校に関係があるのでは?」と思いましたが、1954年に火災で全焼し
てしまったとのことでした。
 かつて学校のあった場所などの記録もなく、記念碑が立っているような話も聞かないのですが、
縁あって十勝の地に住むことになりましたので、今後も地域のろう者の方にお話を伺ったり、さ
らに文献や資料を探したりするなどして、知見を広げていきたいと考えています。
 前述したように、近年においても閉校した道内の聾学校が数校あります。そういった聾学校の
歴史が、時間の経過とともに薄れていかないように、しっかりと胸に刻みたいと感じたところで
した。
                                                                                      令和4年12月
 

お知らせ

校長挨拶(10月)
                                            
                            ホームページへの御訪問ありがとうございます。
                                                                                  北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 いつも北海道帯広聾学校のホームページを御覧いただき、ありがとうございます。
 最近、「新型コロナウイルス感染症の第7波がピークアウトに差しかかってきた」という報道を耳
にするようになり、明るい兆しが感じられるようになってきました。この状況を維持・改善するため
にも、感染予防の継続を徹底していきたいと思います。
 さて、8月にも記載しましたが、本校は比較的早期に1人1台タブレット端末を活用した教育環境
が整い、先生方はICTを活用した授業実践に取り組んでいます。
 同居家族が陽性で、本人に症状が出ていないときに、学校と家庭をつないだリモート学習を行った
り、全校集会のような行事にリモート参加したりすることなども行われています。
 日常の授業の様子を巡回しながら見ていても、ICT機器が普段づかいの学習教材、文房具のひと
つとして意欲的に活用されており、子どもたちの学習に向かう姿勢も前のめりになっている様子が見
受けられます。
 さて、校長としては、校内の教育環境の充実と同じくらいに、校外とのつながりにも力を入れたい
と考えているところで、コロナ禍で様々な制約がある中、本校の教育活動を広く発信することはでき
ないかと考え、ホームページの更新頻度を上げることに思い至りました。
 年度当初、本校のホームページには訪問者数のカウンターが設置されておらず、正直なところ、ど
のくらいの人が見てくれているのか、そもそも見てくれる人がいるのか、という実感もあまりもてな
い状況でありました。しかし、身近な地域の方々さえも学校行事にお招きできない現実の中、子ども
たちの頑張りの最新情報をホームページで発信することには大きな意義があると考え、先生方の協力
を得ながら更新頻度を上げる取組を進めることとしました。
 5月23日に閲覧者数のカウンターを設置し「0」からのスタートとなりましたが、7月には訪問
者が1万5000人を超え、9月には4万2000人を超えました。毎日約300人強の方に見てい
ただいていることになります。本当にありがたい限りです。
 コロナ禍においては「感染者数の数字に左右されないように」と自分自身に言い聞かせていますが、
こうした気持ちを前向きにしてくれる数字の力は、やっぱりすごいなと実感します。
 多くの方に見ていただいていることを意識し、子どもたちの素晴らしさ、先生方の不断の努力、学
校のよさがより伝わるようなホームページづくりに取り組んでいきたいと思います。
 ところで、6月に、本校の運動会の取材に来られた新聞記者の方から、「総練習は赤組が勝ったんで
すよね、ホームページで見ました」と言っていただきました。
 数字の伸びも嬉しいのですが、実際に閲覧してくださった方の声を直接お聞きするのは、この上ない
喜びでした。
 御覧いただいている皆様にも、御意見や御感想を電子メールやFAX等にてお寄せいただけるとあり
がたいです。
 今後の取組の参考にさせていただきますとともに、皆様の声は、更新作業に力を注いでいる先生方の
励みにもなると思います。今後ともよろしくお願いします。

                                                                                              令和4年10月

 

校長挨拶(8月)

校長挨拶(8月)
            

            ICTの効果的・魅力的な活用
                                                                    北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 GIGAスクール構想によって整備された1人1台端末等を活用した学習活動が促進され、ICT
を活用した特別支援教育の充実に取り組み、約3年になります。
  本校でもICTを活用した教育活動に積極的に取り組んでいます。特にタブレット端末は、児童生
徒にも教師にも「文房具」のように定着し、授業の中で当たり前に活用されています。
 子どもたちが知りたいことを検索したり、自身の調べ学習の成果発表のためのプレゼンテーション
資料を作成したりすることは、これまでの教育活動でも取り組まれていましたが、先日行われた本校
の授業研究において、特に印象的だった実践をここで御紹介したいと思います。
 中学部の保健体育の授業で、「生活習慣の健康への影響」を主題に、喫煙、飲酒、薬物乱用のきっか
けや心理的要因、社会的要因について学び、まだ20歳になっていない自分が、友人や目上の人から勧
められたりしたときにどのように対処するかを考え、それを実際にロールプレイでやってみて、その
ときの自分の心情、相手の心情も考えてみる、という内容でした。
 生徒たちは、「こういった誘いがあったとき、どう返答するか」を考え、教師の指示の下、Goog
leドライブ内のドキュメントにいそいそと入力を始めました。
 昔、私が教師として教科指導していたときなら、子どもたちにプリントを配って記入させ、一人一
人に発表してもらい、それを板書して共有するといった形で展開していたところだったと思います。
 しかし、この授業では、生徒それぞれが入力した内容が、リアルタイムで各自のタブレット端末の
画面上で見えるようになっていて、スピーディーに全員の考えの共有化が図られていました。
 もちろん、学部、学年、児童生徒の実態によって、書いたり、発言したりしての押さえや確認も必
要だと思います。ただ、この学年の生徒たちにおいては、上記の活動が大変テンポよく進み、画面を
見ながらの意見や質問、感想などの発言が積極的に交換されていました。
 このような活動は、もしかしたら多くの学校で既に取り組まれているのかもしれませんが、ICT
を使った指導のレパートリーに疎い私にとっては既成概念を超えた授業展開で、わくわくしながら参
観させてもらいました。生徒たちが、同じ課題に向かってそれぞれの考えたことを確実に共有し意見
を交わす姿に、強い一体感を感じましたし、ICTを効果的・魅力的に活用することで、子どもたち
の意欲は著しく高まっていくのだと実感しました。
 ただ、デジタル・ネイティブの子どもたちの飽きやすさには気がかりな思いももっています。学校
教育において、「子どもたちを飽きさせないために、常に新しいものを追い求めなくてはならないの
か?」、「使い捨ての興味・関心でいいのか?」と考えてしまうことがあります。
 ICT活用は目的ではなく手段であり、我々教師は、教育的成果を上げることにこだわらなければ
いけません。子どもたちが理解したことを、刹那的な知識ではなく、しっかりと蓄積させようとする
教師の創意工夫も、ICTの効果的な活用の本質に含まれるように感じます。
 学習場面において、ICTで扱う教材等が決して目新しいものではなくても、それをいかに魅力的
に提示するか、活用するかというところも、教師の腕の見せ所ではないかと思います。

 なお、本校では教師一人一人にもタブレット端末が与えられており、職員会議等の校務においても
活用しています。密にならないように体育館に集合し、事前にPDF化した資料データを保存したタ
ブレット端末とタッチペンを各自持参し、ペーパーレスで会議を行うなどの工夫もしています。
 今も、これからも、ICT機器は多くの場面において大切なツールになると思います。
 いずれ、授業の中で、子どもたちがお互いに「もっとこうしたらいいよ」、「こうした方が分かりや
すいよ」と、タブレット端末を使いながら、学びや理解を深めるために提案し合うような場面が見ら
れることに期待したいと考えています。
                                                                                                 令和4年8月



 

お知らせ

校長挨拶(6月)
                                 

「進取の気性に富む」

                                                                                            北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦
 前任校から本校に異動して2か月が過ぎました。
 入学式を始め、新入生の歓迎行事、遠足、避難訓練等の集団行事も、感染予防対策を徹底して行っ
ており、6月は運動会に向けての準備や練習などが始まる予定です。
 教室や廊下からは子どもたちの明るい声が聞こえてきて、新入生も生き生きと学校生活を送ってい
るようです。
 私と同じく他校から赴任された先生方は、他の地域の聾学校や、聴覚障がい以外の障がい種の特別
支援学校から来られており、前任校との違いに、新入生同様緊張していたこととも思いますが、新し
い学校での教育活動に少しずつなじんでこられている様子が見受けられます。
 教職員、子どもたち、家庭とも、コロナ禍の「学校の新しい生活様式」が、安定的に定着してきて
いるのを感じます。

 ところで、先日、帯広聾学校に転勤したことをお知らせするハガキを、お世話になっている方々に
お送りし、数名の方からお返事をいただきました。
 その中に、私が初任の頃からお世話になっている方からのメールがあったのですが、次のようなこ
とが書かれていました。


「私が若い頃、帯広聾学校は『進取の気性に富む』が学校のキャッチフレーズであり、特色でした。」


 「進取の気性に富む」とはどういう意味でしょう?
 調べてみたところ、「従来の慣習などにこだわらず、自ら進んで新しいことにチャレンジしようとす
ること」とありました。
 もともと北海道に聾学校はなく、1930年代には視覚障がい児と聴覚障がい児を教育する「盲唖
院」が道内に数校あったのですが、帯広・釧路方面の道東地方には全くありませんでした。
 そのことを知った岩元悦郎先生が奮起し、小樽盲唖院での教員の職を辞して帯広に引っ越し、自ら
「帯広盲唖院」を設立し、初代校長となられたところから、帯広聾学校の歴史は始まります。
 これまでの教育活動で培ってきたものを継承しつつ、これからの時代を生きる子どもたちに必要と
なる資質・能力を身に付けさせる。これまでと変わりなく大切にすべきものと、時代とともに変わっ
ていかなければならないもの、「不易」と「流行」を効果的に位置づけた学校づくりを行っていきた
いと思います。
 また、岩元校長が、情熱を傾け、戦災や差別に苦しみながらも守り続けてくれた本校が、「進取の気
性に富む」学校として、これまでも、これからもあり続けられるように、チャレンジしていく気持ちを
大切にしていきたいと思います。

                                                                            
                                         令和4年6月

 

お知らせ

校長挨拶(4月)
                                       

御 挨 拶

                                                                    北海道帯広聾学校長 大 塚 雅 彦

 
 北海道帯広聾学校のホームページを御覧いただき、ありがとうございます。

 
 本校は、北海道中東部に位置する十勝管内の帯広市にある、聴覚障がい教育を行う特別支援学校で
す。
 昭和12年の開校し、今年で84年目を迎えた歴史ある学校で、地域の方々、盲聾教育後援会、同窓
会の方々に支えられ、聴覚に障がいのある子どもたちの教育と保護者支援を行っています。
 令和4年度は、幼稚部3名、小学部9名、中学部6名、合計19名の子どもたちが在籍しています。
また、乳幼児相談室を設置し、0歳から2歳までの聴覚障がいのある乳幼児と保護者、御家族への支
援を行っています。
 家族的な雰囲気の中、少人数のメリットを生かし、確かな学力と言語力の向上を図り、自立と社会
参加を目指して教育活動を進めています。

 
 今年度も昨年度に引き続き、学校教育目標「『学び、生かす』力を培い、自己実現を図る人を育て
ます」の下、それぞれの学部において、子どもたちの発達の段階に合わせ、幼稚園、小学校・中学校
に準ずる教育活動を行うほか、併せもつ障がいのある子どもの実態にも配慮し、個に応じた指導に取
り組んでいきたいと思います。
 
 なお、「本年度の最重点」として、以下のように設定しています。


1 聴覚障がいの特性をふまえ聴覚障がい教育の専門性を生かした教科指導・生徒指導、特別支援教    
 育の知見を生かした全人的な教育
2 安全・安心な環境づくりと教育の充実

 
 知識・技能のみに偏らず、個性を生かし感性や意思・協調性を含めた全面的な子どもの発達を促し
人間力を高めること、学力も体力も人間関係を築く力なども幅広く豊かに身に付けた子どもを育成す
ることを目指したいと考えています。
  また、防災・防犯はもとより、食育、学校保健、新型コロナウイルス感染予防など、安全・安心な
環境づくりとともに、安全教育を実践に取り組みたいと考えています。


 新しい時代を生きる子どもたちを育んでいくためには、保護者の皆様、地域の皆様、本校に関わる
全ての方々と教職員が一丸となって、教育活動を進めていく必要があります。
 今後とも本校および本校の子どもたちへの、一層の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。


 本ホームページでは、教育内容や教育活動を随時更新してまいりますので、御意見や御感想があり
ましたら、電子メールやFAX等にてお寄せいただければ幸いに存じます。
 なお、「校長挨拶」につきましても、今後更新していきたいと考えております。
 今年1年間、どうぞよろしくお願いいたします。


                                                                                               令和4年4月